頭・顔に関する病名

上半身に関する病名

下半身に関する病名

泌尿器に関する病名

全身・その他に関する病名

女性特有の病名

男性特有の病名

小児特有の病名

脳腫瘍

脳腫瘍とは、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称で、各部位からさまざまな種類の腫瘍が発生します。脳腫瘍が脳に発生し、大きくなると、腫瘍の周りには脳浮腫のうふしゅという脳のむくみが生じます。手や足を強くぶつけると、手足が腫れることと同じです。脳の機能は、腫瘍や脳浮腫によって影響を受けます。

甲状腺癌 (Thyroid cancer)

甲状腺の一部に腫瘍ができるもの(結節性甲状腺腫)のうち、悪性の腫瘍を甲状腺がんといいます。通常は、しこり(結節)以外の症状はほとんどありません。まれに、違和感、呼吸困難感、嗄声(声のかすれ)、のみ込みにくさ、誤嚥ごえん、圧迫感、痛み、血痰などの症状が出てくることがあります。

喉頭癌 (Laryngeal cancer)

喉頭がんはのどの喉頭にできるがんを喉頭がんといい、喉頭がんは頭頸部がんの1つです。喉頭には「発声」「誤嚥(ごえん)の防止」「気道確保」の役割があります。喉頭がんは、腫瘍ができる場所により「声門がん」、「声門上部がん(声門上がん)」「声門下部がん(声門下がん)」の3つに分類され、この中で「声門がん」が喉頭がんの半数以上を占めます。

下咽頭癌 (Hypopharyngeal cancer)

下咽頭がんは、下咽頭に発生するがんで、頭頸部がんの1つです。発生するがん細胞の種類(組織型)はほとんどが扁平上皮がんです。下咽頭がんは、初期のうちは自覚症状がみられないことがあります。自覚症状としては、飲み込むときの違和感、おさまらない咽頭痛、のどからの出血、耳の痛み、口の奥・のど・首にできるしこり、声の変化があげられます。

口唇口腔癌 (Lip and Oral cancer)

口腔がんはお口の中やその周辺組織に発症するがんです。その中でも、唇やその付近に発生するがんのことを「口唇がん」と呼びます。口唇がんは、口腔がんの中では最も発症する可能性が低く、唇の外側にできた場合は視覚的にも発見しやすく、早期発見・早期治療が可能な口腔がんの一つです。

眼球内腫瘍(眼球にできる腫瘍)

脈絡膜悪性黒色腫

脈絡膜悪性黒色腫とは 脈絡膜悪性黒色腫は、目の後部に位置する脈絡膜に発生する稀ながんです。 ぶどう膜(脈絡膜、毛様体、虹彩)悪性黒色腫に含まれ、成人の眼球内に生じる悪性腫瘍です。国内の発症は年間50名程度と推定されている希少ながんです。初期ではあまり症状がありませんが、進行すると視界が欠ける・ぼやける・歪むなどを自覚するようになります。腫瘍の大きさにより治療方法が異なり、進行して腫瘍が大きい場合は眼球摘出となりますが、そうでなければ小線源治療や粒子線治療など放射線治療による眼球温存治療も選択が可能です。この疾患は主に成人に発症し、視力の低下や目の痛みを引き起こすことがあります。 脈絡膜悪性黒色腫は、他の組織への転移が特徴で、特に肝臓への転移が一般的です。

眼内悪性リンパ腫

眼内悪性リンパ腫は、眼球内に発生するリンパ系組織のがんです12。眼球は脳から形成されるため、眼内リンパ腫は脳のリンパ腫である中枢神経系悪性リンパ腫の一亜型とされます1。ほとんどの眼内リンパ腫は大細胞型B細胞リンパ腫という種類で、視力低下や眼の検査で異常が見られます1。眼球周囲組織や中枢神経系にもリンパ腫が発生することがあり、重篤な病状になる可能性があります。

眼付属器の腫瘍(眼球の周りにできる腫瘍)

眼瞼腫瘍

まぶたにできる腫瘍を眼瞼腫瘍といいます。眼瞼腫瘍には良性と悪性の両方があります。良性腫瘍には麦粒腫や霰粒腫、脂漏性角化症などがあり、悪性腫瘍には扁平上皮がんや基底細胞がん、脂腺がんなどがあります。主な症状は目の異物感やしこり、出血などです。診断は病理検査(腫瘍の一部をとって顕微鏡でみる検査)が主体になります。腫瘍の種類に合わせて、手術や抗がん剤治療、放射線治療が選ばれます。まぶたにしこりを感じる場合は眼瞼腫瘍ができている可能性があります。

涙腺がん

涙腺がんは、涙を分泌する涙腺に発生する比較的まれながんです。このがんは、他の多くのがん種と同様に、異常な細胞の成長によって特徴づけられます。涙腺がんの正確な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、遺伝的要因、環境要因、生活習慣などが関連していると考えられています。特定の環境要因、例えば過度の紫外線露出や特定の化学物質への曝露も、リスクを高める可能性があります。涙腺がんの症状には、涙腺の腫れや痛み、視力の変化、目の周囲の変形などがあります。また、顔の片側の筋肉の弱さや麻痺を伴うこともあります。

眼付属器リンパ腫

眼付属器リンパ腫は、眼やその周辺組織を侵すリンパ系の悪性腫瘍です。この腫瘍は一般に、眼窩、眼瞼、涙腺などの眼付属器に発生します。眼付属器リンパ腫は、全リンパ腫の中で比較的稀なタイプに分類されます。その臨床的表現は多岐にわたり、しばしば他の眼疾患との鑑別が必要です。眼窩内の場合は眼瞼の腫れや眼球突出などの症状があります。腫瘍の一部をとって病理検査を行うことで診断できます。リンパ腫の診断がついた後で全身検査を行い、他部位に腫瘍があるか検査を行います。眼部だけに腫瘍がある場合には放射線治療を行うことが多く、80%以上治癒します。ただ、切除だけでも長期間寛解することがあり、治療の効果と副作用を考えて治療法を決めます。眼以外の部位に病変がある場合は全身のリンパ腫としての対応が必要です。

眼窩肉腫

眼球が収められている、骨で囲まれたくぼみを眼窩がんかといい、眼窩にできる腫瘍のことを眼窩腫瘍といいます。眼窩内や眼窩骨に肉腫を生じることがありますが、非常にまれです。眼窩には眼球のみでなく、涙をつくる涙腺や眼球を動かす筋肉、神経、血管、脂肪などさまざまな組織があるため、いろいろな種類の腫瘍が発生します。腫瘍には良性のものと悪性のものとがあります。悪性腫瘍が癌であり、腫瘍=癌ではありません。また、厳密な意味では腫瘍ではありませんが、炎症などで塊状のものが眼窩にできることがあり、そのようなものも眼窩腫瘍に含められます。

結膜腫瘍

結膜腫瘍とは、眼球の白目(結膜)に腫瘍ができた状態です。良性の腫瘍であることが多いものの、見た目だけでは悪性腫瘍と完全に区別することができません。年々大きくなっているような場合には腫瘍を切除摘出して、病理検査(取り出した組織を顕微鏡で観察して、腫瘍が良性か悪性かを判断する)で調べることが大切です。

視神経腫瘍(眼の神経にできる腫瘍)

神経膠腫

神経膠腫(しんけいこうしゅ)は脳腫瘍の一種で、「グリオーマ」とも呼ばれます。
脳の神経細胞は、さまざまな種類の細胞に構造を支えられたり、栄養をもらったりして、複雑なネットワークを形成しています。このように神経細胞をサポートするさまざまな細胞のグループを「神経膠細胞」といい、この細胞が腫瘍化したものが神経膠腫です。神経膠細胞にはいろいろな種類があるため、どの細胞が腫瘍になったのか、どのような遺伝子変化が起こって腫瘍になったのかなどによって、病気の経過や好発年齢(神経膠腫にかかりやすい年齢)、治療法なども異なります。特徴的な症状はあまりなく、手足が麻痺する、言葉が出ない、認知機能が低下するなど、腫瘍ができた場所によって症状もさまざまです。また、脳の局所症状だけでなく、頭痛やてんかんがみられることも少なくありません。
髄膜腫は原発性脳腫瘍(がんの転移でない脳腫瘍)のうち最も頻度の高いものです。ゆっくり大きくなるので無症状であることも多く、脳ドック検査などで偶然発見される脳腫瘍の半数が髄膜腫であるといわれています。

髄膜腫

髄膜腫は、そのほとんどが良性(WHO分類のGrade1に相当)です。しかし、一部に細胞分裂が速いやや悪性のものが存在しますので、注意が必要です。
腫瘍は硬膜に付着しながら放射状に成長し、発生母地となるくも膜細胞があれば頭蓋内のどこからでも発生しますが、前頭部の円蓋部に発生することが最も多いです。(図1 円蓋部髄膜腫)。円蓋部髄膜腫は無症候であることが多いですが、てんかん発作や麻痺などを起こすこともあります

神経鞘腫

神経鞘腫はシュワン細胞が元になって発生すると考えられる腫瘍のため、シュワン細胞腫とも呼ばれます。シュワン細胞とは末梢まっしょう神経(脳や脊髄などの中枢神経から、全身に分かれた神経)の周りを覆う細胞で、神経線維の保護や再生に関わっています。通常は良性ですが、まれに悪性の神経鞘腫が発生することがあります。これは悪性末梢神経鞘腫(悪性シュワン細胞腫)と呼ばれ、再発を繰り返したり遠くの臓器に転移したりすることもあります。神経鞘腫は発生部位によって症状が異なります。多くの場合は皮下組織や筋肉のような軟部組織に発生しますが、消化器官などのさまざまな箇所に発生することもあります。なかでも脳・脊髄神経に発生するもののうち、聴神経、三叉神経に発生することが多いといわれています。

頭頸部悪性腫瘍

喉頭がん

喉頭がんは、喉頭に発生するがんで、頭頸部がんの1つです。発生するがんの種類(組織型)はほとんどが扁平上皮がんです。がんができる場所によって、「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」の3つに分けられています。この中で最も多いのは声門がんで全体の約70%を占め、次いで声門上部がんが25%、声門下部がんが5%となります。
喉頭がんの中でも声門がんは頭頸部の他の部位のがんと比べて、転移することが少ないです。一方で、声門上部がんと声門下部がんは周辺のリンパ液の流れが豊富なため、リンパ節に転移しやすいという特徴があります。

口腔がん

口腔がんとは、口腔(口の中)にできる悪性腫瘍です。
舌、上下の歯肉(歯ぐき)、頬粘膜(頬の内側)、硬口蓋(上あご)、口腔底(舌と下側の歯ぐきの間)、口唇(くちびる)にできます。組織型分類(がんの組織の状態による分類)では、口腔がんの約90%が粘膜組織から発生する扁平上皮がんです。口腔がんでは、がんができた粘膜の色が赤くなったり、白く変色したり、形が変わったりします。口の中にしこりができる、口内炎がなかなか治らないなどの症状があらわれることもあります。歯ぐきにがんができたときには、歯を支える組織にがんが浸潤しんじゅん(周囲に染み出るように広がっていくこと)し、歯がぐらついたり、入れ歯が合わなくなってきたりすることがあります。進行したときの症状としては、粘膜のただれ、痛みや出血がある、口が開けにくい、食事が飲み込みにくい、話しにくい、などがあります。首のリンパ節に転移したときには、しこりに気付くこともあります。

上顎がん

上顎癌とは顔にある上顎洞という部位に生じる癌です。上顎洞は頬の裏にあり副鼻腔(鼻腔に隣接した骨内に作られる空洞)の一種で、上顎骨と頬骨によって形成され、顔面を構成する重要な部分です。解剖学的には脳・眼球が近く、また鼻腔と口腔との境界を形成しているため、噛んだり喋ったりに不可欠です。咀嚼筋と呼ばれる4つの筋肉が、上顎と下顎骨をつないで、開口・閉口運動を担っています。そのため上顎がんや、がん治療(手術・放射線治療)の影響で、これらの筋肉が障害され、開口運動に障害をきたすことがあります。上顎がんはがん全体の0.5%(頭頸部がんの約3%)です。病理組織は8割が扁平上皮がんですが、その他、小唾液腺由来のがん(腺様嚢胞がん、粘表皮がん)や、悪性黒色腫などが発生することもあります。

下顎がん

下顎がんとは、下顎の歯茎にできた歯肉癌を指します。歯肉癌は上顎よりも下顎に多く、特に奥歯の近くにできやすいことが特徴です。口腔がんのうち15%程度を占めます1。顎下腺がんとは、大唾液腺の一つである顎下腺に発生する悪性腫瘍で、唾液腺がん全体の2~3割を占めます。

耳下腺がん

耳下腺に生じる腫瘍(できもの)を耳下腺腫瘍といい、その中でも悪性のものを耳下腺がんと言います。がんの中では「希少がん」にも分類されるかなりまれな疾患で、国内で1年間に行われる良性の耳下腺腫瘍の手術が約6000件、良性腫瘍と悪性のがんの比率は約10対1と言われています。1年間に新たに耳下腺がんと診断される人は、人口10万人あたり0.6人というデータもあります。良性腫瘍の場合、触れるとしこりのような腫瘤がある以外に痛みなどの症状がないことがほとんどです。一方、悪性(がん)の場合は痛みが出ることが多く、さらにがんが周囲の組織に癒着して腫瘤の動きが悪くなる、顔面神経麻痺を起こすなどの症状が出ることがあります。顔面神経麻痺は顔の左右片方がうまく動かなくなり、目がきちんと閉じられない、口元から水がこぼれる、などの症状が現れます。顔面神経麻痺の多くは耳下腺がん以外の原因によるものですが、耳の前、下辺りのしこりや痛みを伴う場合は注意が必要です。

顎下腺がん

顎下腺がんは、顎下腺に発生する悪性腫瘍で、唾液腺がん全体の2~3割を占めます。顎下腺はあごの下に左右一対存在する母指頭大の臓器です。症状は他の唾液腺がんと同様に当初無痛性の腫瘤として自覚することが多いですが、増大・進行とともに痛みやしびれなどが出現することもあります。治療法には、顎下腺を全摘する手術、放射線治療、化学療法、頸部郭清術などがあります。
甲状腺がん:甲状腺にできたしこりを甲状腺結節といい、そのうち悪性のものを甲状腺がんといいます。多くの場合、自覚症状がないか、しこり以外の症状はありません。病状が進行すると、のどの違和感・嗄声(声のかすれ)・痛み・飲み込みにくさ・誤嚥・血痰・呼吸困難感などの症状が出てくることがあります。甲状腺がんの種類には、乳頭がん・濾胞がん・低分化がん・髄様がん・未分化がんがあり、それぞれで治療法が異なります。一般的に若年であるほど予後がよいとされており、乳頭がん・濾胞がん・低分化がんでは55歳という年齢でステージ(病期)の分け方が変わります。

副腎皮質癌 (Adrenocortical cancer)

副腎皮質から発生する悪性腫瘍です。副腎がんといわれることもあります。副腎皮質は、副腎という臓器の一部分です。副腎は、左右の腎臓の上にあり、中心部を副腎髄質、外側を副腎皮質といいます。

胆管癌 (Biliary canal cancer)

胆管がんは胆管に発生する悪性腫瘍です。胆管とは肝臓でつくられた胆汁を十二指腸へ流す導管である。胆管は肝臓内の細い枝に始まり、次第に合流して2本の太い管(左肝管・右肝管)になり、肝門部で1本に合流し(総肝管・総胆管)、その後膵臓を貫いて十二指腸乳頭部に開口する。いずれの部位にも胆管癌は生じる

大腸癌 (Colon cancer)

大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。代表的な症状として、便に血が混じる(血便や下血)、便の表面に血液が付着するなどがあります。

食道癌 (Esophageal cancer)

食道がんは、食道の内面をおおっている粘膜の表面からできます。食道のどこにでもできる可能性がありますが、約半数が食道の中央付近からできます。また、食道内にいくつも同時にできることもあります。食道がんは、初期には自覚症状がないことがほとんどです。がんが進行するにつれて、飲食時の胸の違和感、飲食物がつかえる感じ、体重減少、胸や背中の痛み、咳、嗄声(声のかすれ)などの症状が出ます。

肝臓癌 (Liver cancer)

肝臓がんとは 肝臓に発症する悪性腫瘍には、肝臓自体から発生する原発性肝がんと、肝臓以外の臓器に発生した腫瘍が肝臓に転移をしたために生じる転移性肝がんの2種類があります。一般的に肝臓がんとは、肝細胞がんのことを指します。

膵臓癌 (Pancreatic cancer)

膵臓がんは、多くは膵管に発生し、そのほとんどは腺がんという組織型(がんの種類)です。
膵臓は、がんが発生しても小さいうちは症状が出にくく、早期の発見は簡単ではありません。進行してくると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感(おなかが張る感じ)、黄疸おうだん、腰や背中の痛みなどが起こります。

胃癌 (Stomach cancer)

胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序にふえていくことにより発生します。胃がんは、早い段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合があります。

肺癌

肺がんとは肺から発生するがんの総称です。
肺がんはその性格、悪性度、今後の見込みを考えるため、肺がんは症状の出にくい疾患です。そのため早い時期に発見するのが難しい病気です。 症状としては咳や痰がありますが、これはあまり気に止めない人が多いと思います。健康診断や病院でたまたまエックス線検査を受けて異常を指摘されて発見される場合が多くみられます。その他の症状としては血痰(けったん)、胸の痛み、腕の痛み、顔の腫れなどの症状があります。

非小細胞肺癌 (Lung cancer - non-small cell)

肺がんは肺に発生する悪性腫瘍の総称で、組織型(顕微鏡によるがんの分類)によって非小細胞がんと小細胞がんに分類されます。非小細胞肺がんとは、肺がんの種類のうち小細胞がん以外のものを指します。非小細胞肺がんは小細胞肺がんと比べて増殖速度が遅く、転移や再発をしにくいという特徴があります。しかし、非小細胞がんの中でも大細胞がんは増殖が速く、腺がんでは症状が出にくい、扁平上皮がんでは症状が現れやすいなど、それぞれで特徴が異なります。

胸膜悪性腫瘍

悪性胸膜中皮腫

胸部の肺、あるいは心臓などの臓器や胃腸、肝臓などの腹部臓器は、それぞれ胸膜・心膜・腹膜という膜で包まれています(図1)。これらの膜の表面をおおっているのが「中皮(ちゅうひ)」で、この中皮から発生した腫瘍を中皮腫といいます。したがって中皮腫は、その発生部位によって胸膜中皮腫・心膜中皮腫・腹膜中皮腫などに分けられます。胸膜中皮腫は悪性腫瘍の1つであり、通常、悪性胸膜中皮腫と呼ばれます。発育形式としては、限局性に発育するのもの(1カ所にかたまりを形成するようなもの)および、びまん性に発育するもの(広く胸膜に沿ってしみこむように発育するもの)があります。悪性胸膜中皮腫はまれな腫瘍でありますが、その発症にはアスベスト(石綿)が関与していることが知られています。悪性胸膜中皮腫では、胸痛、咳(せき)、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感が起こります、また、原因不明の発熱や体重減少がみられるときもありますが、これらは中皮腫に特徴的な症状とはいえず、早期発見が難しい病気です。

心臓悪性腫瘍(悪性中皮腫、悪性リンパ腫、肉腫など)

全身に発生する腫瘍について、臓器ごとの発生頻度を調べたときに、心臓から発生する頻度は0.1%以下と非常にまれではあるものの、心臓からも腫瘍が発生します。また、心臓にできる腫瘍のうち約70%は良性腫瘍で、悪性腫瘍は約30%程度と言われています。
良性腫瘍の中では粘液腫という腫瘍が最も多く良性腫瘍の50%程度で、心臓腫瘍全体の30−40%を占める割合となります。粘液腫以外の良性腫瘍には、脂肪腫、乳頭状弾性線維腫、横紋筋腫、線維腫、血管腫、奇形腫などがあります。これら良性腫瘍は、症状の有無や腫瘍塞栓のリスクに応じて手術の適応を判断します。心臓にできる悪性腫瘍は、原発性(心臓から発生するもの)のものと転移性(他の臓器に発生した腫瘍が心臓に転移するもの)のものに分類されます。心臓原発の悪性腫瘍は、頻度の多いものとして、悪性中皮腫、悪性リンパ腫、肉腫が挙げられます。これらは切除可能な場合は切除が第一選択となりますが、完全切除できた場合でも再発するリスクが高く、化学療法や放射線治療の追加が検討されます。しかしいずれも治療成績が悪く、ベストな治療が見つかっていないのが実情です。心臓にできる肉腫自体非常にまれな疾患ですが、さらに4-50%程度が内膜肉腫、25%程度が血管肉腫、20%程度が未分化肉腫、その他滑膜肉腫、平滑筋肉腫などに分類され、その多くが血管を発生母地とします。心臓にできる肉腫の発症年齢は、他の臓器にできる肉腫と比較して若年齢で発症し、さらに治療成績が他の臓器に発生する場合よりも悪いことが分かっています。

脊椎・脊髄腫瘍(頚椎腫瘍、胸椎腫瘍、腰椎腫瘍、仙骨腫瘍など)

脊椎腫瘍はいわゆる脊柱(せぼね:骨)にできる腫瘍(できもの)です。原発性脊椎腫瘍と転移性脊椎腫瘍(悪性腫瘍(がんなど)の転移)に分類されます。原発性脊椎腫瘍は種類も豊富で若い方からお年寄りの方までの幅広い年齢層にみられますが、頻度は高くありません。一方で転移性脊椎腫瘍は、中・高齢者に多い傾向にあります。肺がん、乳がん、前立腺がん、胃がん、甲状腺がん、腎細胞がんなどが頻度の高い原発巣です。発生部位により頚椎(くび)、胸椎(せなか)、腰椎(こし)、仙骨(でん部)腫瘍に分類されます。一方、脊髄腫瘍は脊柱管(神経の通り道)内に局在する神経や神経周囲組織発生の腫瘍です。脊髄腫瘍は腫瘍と脊髄および硬膜(神経を包んでいる膜)との位置関係から、硬膜外腫瘍、硬膜内髄外腫瘍、髄内腫瘍に大別されます。脊髄円錐部(脊髄下端の胸腰部移行部)より下位では馬尾腫瘍と呼ばれます。また特異な形態を示すものとして、硬膜管の内外、あるいは椎間孔にまたがり脊柱管内外に存在する腫瘍を、砂時計腫と呼びます。初発症状はいずれの腫瘍も局所の疼痛が最も多くみられます。脊椎腫瘍では腫瘍によって骨が壊されることで脊椎の支持性(体を支える機能)が失われることにより生じる症状がみられます。頚椎・頚髄腫瘍では主に頚肩腕への放散痛に、胸椎・胸髄腫瘍では側胸部痛、上腹部痛に続いて脊髄症状(脊髄神経が圧迫されることで生じる神経麻痺症状)が出現することが多いです。脊髄症状は下肢の運動障害(筋力低下)や知覚障害(感覚麻痺)を来し、進行すると完全麻痺(全く下肢が動かず感覚の分からない状態)になります。一方、脊髄円錐部、馬尾腫瘍や腰椎腫瘍では下肢痛やしびれで発症することが多く、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と誤診されることもあります。腫瘍が存在する高位の棘突起を叩打すると、局所痛の増強や不快な放散痛がその末梢に生じることがあります。また、脊椎腫瘍、脊髄髄内腫瘍および排尿中枢の存在する脊髄円錐部の腫瘍では、比較的早期から膀胱直腸障害が出現する例が多くみられます。

胆嚢癌 (Gall bladder cancer)

胆のうがんは胆のうや胆のう管にできたがんです。胆のう結石・胆のう炎・胆管炎・原発性硬化性胆管炎・膵胆管合流異常のある人に胆のうがんは起こりやすいことが分かっています。初期の段階では症状がないことが多いですが、病状が進行すると腹痛・黄疸(皮膚や目が黄色くなる変化)・白色便といった症状が出てきます。

肛門癌 (Anal cancer)

肛門がんは、肛門管(お尻の出口から内部の直腸に向かって約3~4㎝の管状になっている部分)と肛門周囲の皮膚組織にできる悪性腫瘍の総称です。

膀胱癌 (Bladder cancer)

膀胱がんは、膀胱にできるがんの総称です。膀胱がんの主な症状には、血尿や頻尿、排尿時の痛み、尿が残る感じ、切迫した尿意などがあります。血尿には、尿の色が赤や茶色になり目で見てわかる血尿と、顕微鏡で確認できる血尿があります。がんが進行すると、尿が出にくくなったり、わき腹や腰、背中が痛んだり、足がむくんだりすることもあります。

慢性リンパ球性白血病 (Chronic Lymphocytic Leukemia、略称:CLL)

急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球になる前の細胞に異常が起こり、がん化した細胞(白血病細胞)が骨髄で無制限に増える病気です。脳や脊髄などの中枢神経に浸潤しやすく、フィラデルフィア染色体が見られる場合があります。

ユーイング腫瘍(肉腫) (Ewing's cancer)

ユーイング肉腫は、主として小児や若年者の骨や軟部組織に発生する肉腫です。粘膜や皮膚などの上皮組織に発生する悪性腫瘍は「がん」といい、骨、軟骨、筋肉や神経などの非上皮組織に発生する悪性腫瘍を「肉腫」と呼びます。小児の骨に発生する悪性腫瘍の中で最も頻度の高い代表的な骨の悪性腫瘍は骨肉腫で、10歳代の思春期、すなわち中学生や高校生くらいの年齢に発生しやすい病気です。

ホジキンリンパ腫(ホジキン病) (Hodgkin's disease)

リンパ球は血液中を流れる白血球の一種であり、免疫に関わる細胞です。リンパ球に由来する悪性腫瘍(がん)のことを悪性リンパ腫と呼びます。悪性リンパ腫にも様々なタイプがありますが、ホジキンリンパ腫はそのうちのひとつです。

非ホジキンリンパ腫 (Lymphoma - Non-Hodgkin's)

リンパ球は血液中を流れる白血球の一種であり、免疫に関わる細胞です。リンパ球に由来する悪性腫瘍(がん)のことを悪性リンパ腫と呼びます。悪性リンパ腫にも様々なタイプがありますが、ホジキンリンパ腫はそのうちのひとつです。ホジキンリンパ腫は日本人における悪性リンパ腫全体の8-10%ほどを占めています。それ以外の90%強の悪性リンパ腫を総称して非ホジキンリンパ腫と呼んでいます。非ホジキンリンパ腫の症状は、痛みを伴わないリンパ節の腫れ、発熱、体重減少、寝汗などです。

黒色腫 (Melanoma)

皮膚がんの一種で、皮膚のメラニン細胞から発生する悪性腫瘍です。メラノーマという名前でも知られています。紫外線や怪我の影響で起こりやすくなることが知られており、日本では1年間に1,500-2,000人程度が発病しています。1年から2年かけてほくろのようなしみが徐々大きくなる以外に明らかな初期症状はありませんが、進行すると他の臓器に転移をすることもあります。

中皮腫 (Mesothelioma)

胸腔(胸膜に囲まれた空間)や心膜(心臓を入れている袋)の表面を覆っている膜様組織の「中皮」から発生するがんを指します。主要な原因はアスベストを吸うこととされていますが、発症する仕組みは現代の医学ではまだ明らかになっていません。治療が難しい病気であり、治療の際には経験豊富な医師の判断を求めることが重要です。

多発性骨髄腫 (Multiple myeloma)

身体を異物から守る免疫系で重要な役割を担っている「形質細胞」という細胞が「骨髄腫細胞」にがん化してしまい様々な症状を起こすがんです。形質細胞は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から体を守る抗体をつくる働きをもっていますが、がん化した骨髄腫細胞は異物を攻撃する能力がない抗体(Mタンパク)をつくり続けます。多発性骨髄腫は、骨髄腫細胞やMタンパクが増えることによって、さまざまな症状が起こります。

副甲状腺がん

副甲状腺がんは、副甲状腺にできる腫瘍の一種で、良性がほとんどですが、まれに悪性のケースがあります。副甲状腺機能亢進症の検査や治療の過程で発見されることが多い病気です。副甲状腺癌は通常、増殖が遅く、初回手術で被膜を破綻させることなく腺全体を摘出できる場合は、無再発での長期生存が一般的である。再発がんは通常、緩徐に増殖し、頸部に局所的に進展する。

慢性骨髄性白血病 (Chronic Myelogenous Leukemia、略称:CML)

慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞に異常が起こり、白血球や赤血球、血小板の数が無制限に増える病気(骨髄増殖性腫瘍)の1つです。血管を流れる血液(末梢血)中の白血球の数が通常よりも増えることや、フィラデルフィア染色体が見られ、BCR-ABL1融合遺伝子といわれるがん遺伝子があることが主な特徴です。BCR-ABL1融合遺伝子によりつくられるBCR-ABL1チロシンキナーゼと呼ばれるタンパク質が常に活性化し、がん化した細胞(白血病細胞)が増えることによって起こる病気です。

乳癌 (Breast cancer)

乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生しますが、一部は乳腺小葉から発生します。乳がんの主な症状は、乳房のしこりです。ほかには、乳房にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対照になる、乳頭から分泌物が出る、などがあります。

子宮頚癌 (Cervical cancer)

子宮頸がんとは、子宮頸部にできるがんのことです。大部分の子宮頸がんは、CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)やAIS(上皮内腺がん)という、がんになる前の状態を経てからがんになります。がんになる前の状態であるCINやAISの時期には症状がなく、おりものや出血、痛みもありません。

子宮内膜癌(子宮体がん)(Endometrial cancer)

子宮体がんで、最も多い自覚症状は出血です。月経ではない期間や閉経後に出血がある場合は注意が必要です。出血の程度には、おりものに血が混ざり、褐色になるだけのものもあります。他には、排尿時の痛みや排尿のしにくさ、性交時の痛み、下腹部の痛みなどの症状があり、進行した場合は腹部膨満感(おなかが張る感じ)があらわれることもあります。

卵巣癌 (Ovarian cancer)

卵巣がんは卵巣に、卵管がんは卵管に発生する悪性腫瘍です。がんが初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、食欲がなくなったなどの症状をきっかけに受診し、卵巣がん・卵管がんであることがわかる場合もあります。また、がんが大きくなると、膀胱や直腸を圧迫することにより、頻尿や便秘が起きたり、脚がむくんだりすることもあります。

外陰部悪性腫瘍

外陰がん

外陰部は、上部にある丸みを帯びた恥丘、外郭がいかくに位置するふくらみのある表皮である大陰唇、その内側の左右一対の小陰唇などで構成されます。小陰唇の上方には陰核があります。会陰は腟口から肛門までを指します。外陰がんは外陰部に悪性腫瘍です。多くは大陰唇に発生しますが、小陰核や陰核などにも発生することがあります。一般に外陰癌の場合、組織型は大部分が扁平上皮癌ですが,腺癌のこともあります。子宮頸癌と同様に、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であることもあります。外陰部に発生するがんのほとんどは扁平上皮がんです。その中で、外陰部の皮膚の表面をおおう上皮内でとどまっているものを外陰上皮内腫瘍(VIN:vulvar intraepithelial neoplasia)といいます。また、その他の外陰がんとして、扁平上皮がん以外の悪性疾患もまれにあります。

扁平上皮がん

外陰部に発生するがんのほとんどは扁平上皮がんです。その中で、外陰部の皮膚の表面をおおう上皮内でとどまっているものを外陰上皮内腫瘍(VIN:vulvar intraepithelial neoplasia)といいます。また、その他の外陰がんとして、扁平上皮がん以外の悪性疾患もまれにあります。早期の段階では自覚症状がない場合があります。症状としては、外陰部の腫瘤、かゆみ、熱感、痛み、出血、色素沈着、皮膚の色が部分的に白くなる白斑などがあります。

前立腺癌 (Prostate cancer)

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がありません。しかし、尿が出にくい、排尿の回数が多いなどの症状が出ることもあります。

睾丸癌(精巣がん)(Testicular cancer)

精巣がんは精巣内の多分化能をもつ生殖細胞から発生する胚細胞腫です。男性ホルモンを分泌すると同時に、精子をつくり生殖を可能にする役割があります。. 精巣がんにかかる割合は10万人に1人程度で比較的まれな腫瘍です。. しかし他の多くの癌と異なり、20歳代後半から30歳台にかけて発症のピークがあり、若年者に多い腫瘍であることが大きな特徴です。

小児がん(リンパ腫)

小児のリンパ腫は小児がん全体の約7-10%をしめ、白血病、脳腫瘍、神経芽腫に続く第4位の発症頻度です。発症年齢のピークは明確ではありませんが、10歳前後からの発症が多く、乳幼児での発症は頻度が低くなります。リンパ腫とは血液がんの1つで、白血球の中のリンパ球が、がん化したものです。発生する部位は、リンパ系組織とリンパ外臓器(節外臓器)の2つに大きく分けられます。リンパ系組織は、細菌やウイルスなどの病原体の排除など免疫機能を担当する組織や臓器で、リンパ節や胸部付近にある胸腺きょうせん、脾臓ひぞう、扁桃へんとうなどです。リンパ外臓器(節外臓器)は骨髄こつずい、肺などの臓器です。こうしたリンパ系の組織や臓器は全身にあり、リンパ腫は全身のどこにでも発生する可能性があります。リンパ腫はホジキンリンパ腫 (Hodgkin Lymphoma, HL)と非ホジキンリンパ腫 (non-Hodgkin Lymphoma, NHL)に大別されます。大人ではそのうちの非ホジキンリンパ腫がさらにたくさんの種類に分けられますが、小児では発症する非ホジキンリンパ腫の種類は限られていて、後述の4種類で全体の90%以上を占めます。①びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 (Diffuse Large B-cell Lymphoma, DLBCL)②バーキットリンパ種 (Burkitt Lymphoma, BL)③リンパ芽球性リンパ腫 (Lymphoblastic Lymphoma, LBL)④未分化大細胞性リンパ腫(Anaplastic Large Cell Lymphoma) です。

胚細胞腫瘍

生殖器(精巣・卵巣)と体の中心線に沿った部分、胸の中(縦隔)、お腹の中(後腹膜、仙骨部)、脳(松果体、神経下垂体部)などに発生しやすい悪性腫瘍の1つです。好発年齢は10歳代から30歳代です。小児の時期に発生する場合には、半数は生殖器以外の部位から発生しますが、青年期に発生する場合には生殖器・特に男性の精巣発生が9割以上を占めています。男性の胚細胞腫瘍は年間10万人あたり1人から3人程度の発生と報告されていて、比較的まれな腫瘍です。胚細胞腫瘍は遠隔転移があっても根治が期待できる腫瘍の1つですので、進行期であっても適切に治療を行うことが非常に重要です。

神経芽腫

神経芽腫は、体幹(手足を除いた体の軸となる部分)の交感神経節や副腎髄質などから発生する小児がんの1つです。小児期にできる固形腫瘍の中で白血病、脳腫瘍についで多い病気です。特に、5歳以下のお子さんの発症率が高いとされています。神経芽腫はリンパ節や皮膚にしばしば転移するため、首やわきの下、足の付け根などのリンパ節が大きくなったり、皮膚にしこりができたりすることでみつかることもあります。また、骨やその中の骨髄にもしばしば転移するため、骨が痛くなることもあります。

軟部腫瘍

軟部腫瘍は、やわらかい組織のどの部位に発生したかによって、30〜40種類以上に分類されますが、比較的、手足に発生する場合が多いようです。発症年齢は、子どもから高齢者までと幅広く、年齢や性別によって発生部位の傾向が異なります。軟部腫瘍の患者さんは、良性が70%、悪性が30%と圧倒的に良性が多いようです。また、皮膚の下の皮下脂肪組織(皮下組織)にも軟部腫瘍が発生することがあります。そして、この皮下組織に発生する軟部腫瘍のうち、20%程度に悪性軟部腫瘍が含まれていることが知られています。

骨腫瘍

骨腫瘍は骨組織に発生する腫瘍であり、原発性腫瘍と転移性腫瘍に分けられる。殆どの場合、長管骨の骨幹端に発生する。原発性の場合、組織生検によって悪性か否かを判定する。骨腫瘍は若年者の発症が非常に多い。小児期にみられる骨腫瘍のほとんどは、原発性かつ良性です。一部の骨腫瘍(骨肉腫や ユーイング肉腫など)は原発性かつ悪性です。転移性のものはごくわずかです(神経芽腫や ウィルムス腫瘍)。

網膜芽腫

網膜芽腫は網膜に発生する悪性腫瘍です。小児期に発症する眼球内腫瘍の中で最も頻度が多い腫瘍である。乳幼児に多く、出生児17,000人につき1人の割合で発症します。黒目の中心である瞳孔に入った光が腫瘍で反射して猫の目のように白く輝いて見える症状(白色瞳孔あるいは猫目現象と呼ばれます)に家族が気付いて受診する場合が多く、95%が5歳までに診断されます。早く治療が行われれば生命に関わることは少なく、治すことができます。

横紋筋肉腫

横紋筋肉腫は、筋肉などの軟らかい組織(軟部組織)から発生する軟部肉腫の1つで、将来、骨格筋(横紋筋)になるはずの細胞から発生した悪性腫瘍です。軟部悪性腫瘍としては小児で最も多く見られます。横紋筋肉腫は、実際には病名に使用されている「横紋筋」(骨格筋)だけではなく、全身のあらゆる部位から発生します。特に、膀胱、前立腺、傍精巣、子宮、腟などの「泌尿器や生殖器」、傍髄膜(鼻咽頭、鼻腔、副鼻腔、中耳などの頭蓋底付近)や眼窩(眼球が入っている骨のくぼみ)を含む「頭頸部」、「四肢(上肢、下肢)」によく見られます。

腎芽腫(ウィルムス腫瘍)

小児の腎臓内にできる腫瘍の約70%は胎生期の後腎芽が細胞由来の腎芽腫あるいはウィルムス腫瘍と呼ばれる悪性腫瘍です。腎芽腫の約半数は3歳までに発症します。腎芽腫の大半は、治療によく反応する予後の良いがんですが、治療の効果があらわれにくいものもあります。また腎臓には、腎芽腫のほかに、腎明細胞肉腫、腎ラブドイド腫瘍などと呼ばれる腫瘍も生じます。このほか、比較的よくみられる腎腫瘍として先天性間葉芽腎腫があります。これは乳児期早期に多くみられ、ほとんどが手術による切除のみで治ってしまう腫瘍です。